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鶴見大学「伝統の技を学ぶ(漆塗り体験) 根来塗りを学ぶ」

背景
 私は、機械式塗工技術の職歴にかかわり、60才で定年退職した。その後も古典的な印刷技術、塗布技術に興味を持っていた。まずは、古典的な印刷といえば、浮世絵である。江戸時代の浮世絵作品(安藤広重、葛飾北斎)を美術館で見て回った。現在も浮世絵の伝統を守っているあだち版画研究所を見つけて、版木彫りから年賀状作りを体験させてもらった。しかし、版木彫りは難しく、とても思うようには、できなかった。

 次は、塗布の無機材料に興味を持ち、日本の壁に使われている漆喰塗りを見つけた。都内に漆喰塗りを体験できる教室を見つけたところ、面白さの虜となり、家じゅうを漆喰で塗り、もう塗る場所が無くなってしまう始末であった。再び、振りだしに戻って、美術館めぐりを始めると、漆工芸作品が目に留まった。気に入った漆工芸品(棗など)には、なぜか人間国宝 松田権六の作品が多かった。


受講目的
日本工芸技術の習得
 プラスチック材料系塗布では、寿命は10年位であるが、漆塗りは、寿命100年から1000年と言われている。いまや、大量生産・大量消費の時代は終わり、個性や美術的魅力があって、永く使えるものが大事になってくる。そこで、漆塗りの技術を身につけたいと考えた。しかし、単に漆塗りを言っても、乾漆、象嵌、螺鈿、沈金、蒔絵、箔絵と多種に及び、何から始めてよいのか、初心者には皆目検討がつかない。日光東照宮の箔貼り職人は、ほとんど弟子を取らないともテレビで放送していたので、かなり、漆塗りは敷居が高いかもしれないなと思った。ところが、偶然に身近な鶴見大学生涯学習センターで漆塗りの4日間の体験講座を見つけたので、参加してみた。


受講してよかったこと
 まず、前回2019年に箔絵を受講し、今回2020年に、根来塗りを受講した。前回は、木皿に絵柄の枠を描き、漆を塗って、金箔を貼り付ける工程であった。絵柄のデザインセンスと金箔の貼り付け技術が必要である。私は、デザインセンスがないので、当日、総持寺境内の落ち葉を拾って、そのままなぞってみた。出来上がってみると、初回にしては、まあまあよくできたと思った。


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 今回の根来塗り講座は、黒漆の上に朱漆を塗ってから、磨いで、朱塗りの一部をはがす工程であった。根来塗りとは、上塗りの朱と下塗りの黒、この二色の漆がほどこされた木製の器物を言う。根来塗りのお椀などを生活の中で使って洗っているうちに、永い間に、自然に擦れて磨耗して模様がでてくるのが、根来塗りの味わいと色調である。


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根来塗の例(出典:日本の美術 (120) 至文堂 編)


 今回は、4日間の内の1日だけで自分で磨いて、模様を出してみるという手法だったので、試しにらせん状に磨いてみた。本来の根来塗りとは、ぜんぜん違うが、以下の写真のようなおもしろい作品が出来上がった。


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受講後の変化
 はるか遠く昔の存在であった漆工芸が身近になってきた。そこで、2020年1月に池袋の第37回日本伝統漆芸展に行ったところ、審査委員長に人間国宝 室瀬和美の名前があった。調べてみると、その師匠が人間国宝 松田権六であった。そして、今回の講座の室瀬先生とも名字が同じと気づいて、調べてみると、先生の父親でもあった。どこかで、繋がっているものである。また、実用品の漆器、美術工芸品、日本建築として、漆が使われており、いろいろなものに興味がわくようになった。今回、根来塗りに参加したことで、教科書にない、日本の史実にも触れることができるようになった。

 今回の講座には、根来寺の関係者も参加していたので、根来寺の話も聞くことができた。もともと根来寺は、高野山よりも大きな宗派で2700棟以上の寺の集合であったが、1585年に豊臣秀吉に全て焼き打ちにされ、元の根来寺は絶えてしまったとのこと。たまたま、漆塗りの中で、根来塗りが残っていたので、知りえたことであった。漆塗りは、1000年持つと同時に、その時代を映し出すものでもあるので、過去の作品を見ていくと、ほかにも隠れた史実が見つかるかもしれない。作品と一緒に、年代、作者、所有者、背景を探っていきたいと考えている。は、どんな作品と出会えるか楽しみである。


(文責:わぞう 60代・男性)


※今回受講の講座の紹介
http://www.second-academy.com/lecture/TRM13161.html


【受講体験レポートまだまだ募集中】
https://ssl.second-academy.com/second-academy/report2019/


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