2018年11月 アーカイブ


文教大学「江戸の町人社会 -持続可能な社会の実践者たち-」

 通勤バスの車内広告を見て驚いた。それは生涯学習講座の案内だった。江戸文化を教える講師の欄に、地理の研究者の名前を記していた。
 私は学生時代、地理学を専攻していた。だから、歴史学に対しては、親近感とともに近親憎悪のような感情も抱いている。今まで聞いた江戸時代の話はどれも、興味は湧くものの、どことなくリアリティーを感じられずにいた。文献をもとに時間軸に沿って研究する歴史学に対して、地理学は現場に赴いて現在の空間を研究する。地図と野帳を手に、野山や街中を歩きまわっていた学生時代、古文書を読み解く史学科の連中の論文は、時代小説と紙一重とも思っていた。
 地理の目で見ると、江戸時代という歴史上のスポットはどう映るのだろう。そんな興味がわき、受講することに決めた。


65DSCF0847.JPG

Figure 1 教室の入り口。これから講義が始まる。


 講師となって教えてくれたのは、ダンディーな印象の先生だった。
「僕は地理が専門でして」
と前置きして、江戸時代の神田の地図を配った。
「パソコンを準備している間に、この地図のなかから、職人に由来する町名を丸で囲ってください」
と話した。地図を使っての作業から始まるところが、さすが地理の先生だ。
 江戸時代の神田の街には、「瀬戸物町」「蝋燭町」など、職人に由来する地名がたくさんあった。それは、江戸の町に、いかに細かく分業化された職人が暮らしていたかを示していた。
 その頃の職業がどれだけ細かく区分されていたかというと、例えば、扇子の紙を折るだけの職人がいたということでもわかる。紙を折ったら、ついでに骨に貼ればいいのに、と思うところだが、江戸っ子はそんな野暮なことはしないらしい。紙を骨に貼るのは、別の職人がいたのだ。


66DSCF1728.JPG

Figure 2 江戸時代の神田の地図


 これらの職人と職人を結ぶ製造ラインが、問屋の手によって江戸の町に縦横に張り巡らされていた。それが、神田の地図で職人の町名として現れていたのだった。
 こういう分析の方法は、地理学ならではだ。東北の自動車部品が愛知県の組み立て工場に集められて、自動車が出来上がっていく。地理学ではそんなふうに調査する。それを、江戸の町で展開してくれた。
 そして、この分業化された職人の技が、文明開化を経て、現代の日本の製造業へとつながる、と講義では教えてくれた。
 工業だけではなく、江戸の農業も形を変えて、いまの都市農業として受け継がれているという。
 講義によれば、江戸の農業には、肥料にする糞尿という「商品」があったという。江戸の町の糞尿を集め、農村部に還元するシステムができていた。都市と農村で、農作物と肥料とが循環していた。現代では化学肥料が導入されたため、有機的な循環がなくなってしまった。その話を聞いたとき、「都市農業」という言葉が急に薄っぺらいものに感じてしまった。
 こんなふうにして、講義では現代と江戸時代とのつながりを意識させてくれた。江戸時代から形を変えて21世紀の今につながっているものがたくさんあること、そして、惜しくも受け継がれてこなかったものもまた山のようにあることを、教わった。
 もう一つ、この講義の面白かったところは、ビジュアル面である。講師の先生は、文献から探してきた江戸時代の本の挿絵を、スライドで次々に投影した。自ら着彩したものも少なくない。時代劇とはちがうリアリティーで、江戸の町が教室によみがえった。
 ほかにも、落語や判じ絵(絵ヒントクイズのようなもの)なども紹介してくれた。江戸の暮らしが、楽しみながら理解を深められた。


67DSCF1732.JPG

Figure 3 江戸判じ絵の資料 イラストはすべて江戸の地名を示している。


 地理の目で江戸時代を見てみたら、150年の時間が実はつながっていることが分かった。アメリカや中国が、交通や通信、物流で海や空を超えて我が家の茶の間とつながっているように、江戸時代の工業も農業も町人文化も、今の世の中とつながっていた。
 3週間にわたった講義を終えたあと、江戸がぐんと身近に感じられるようになった。江戸時代が150年前の世界ではなくて、電車に乗って1時間ぐらいで着けそうな世界に感じられてきた。歴史を地理の目で見られたおかげだろう。


(文責:オフネスキーまるいち 50代・男性)

鶴見大学生涯学習セミナー「古典芸能を体感してみませんか 敗者の声をきく」

%E7%94%9F%E6%B6%AF%E5%AD%A6%E7%BF%92%E3%82%BB%E3%83%9F%E3%83%8A%E3%83%BC%E5%8F%97%E8%AC%9B.JPG


 2018年10月1日(月)に「古典芸能を体感してみませんか 敗者の声をきく」を受講しました。
 当然かもしれませんが、若い頃は古典芸能(能)には何の興味も持っていませんでした。そのうち雅楽の調べを聞いて、なんとなく古典芸能に興味が出てきました。しかし、歌舞伎でも同じですが独特のセリフやリズムにはついていけず、気にはなっても特に何もせず過ごしてきました。
 還暦も過ぎ会社も定年退職したので、若い頃から新しい知識を得るのに興味があったので大学や自治体が開催している各種生涯学習講座を受講し数年経過しました。その間受講した生涯学習講座の中には、自分が思った内容と違ったものもありました。でもこの講座は、1日講座であったので受講してみました。


 講座は、400名位入れる会場で開催されました。参加者数は、40名程度でその内2/3位は女性でした。参加者の多数は受講経験者のようで、私のような初めての人はほとんどいませんでした。尚、写真は撮影・録音が禁止されましたので講座会場の案内板です。
 この講座は、能について三つある講座(仕舞の初級/中級と揺(うたい))の合同講座でした。講師は、能楽師二人(喜多流・シテ方と下掛宝生流・ワキ方)とコーディネーターの三人でした。
 最初の30分間は、コーディネーターが古典芸能についての考えを話されました。その後コーディネーターが能楽師に演技についての体験談や失敗談・苦労話等次々に質問し能楽師がそれに回答するという対話になりました。その中で、シテ方とワキ方の役割の違いや流儀の違い(流儀は、シテ方は五つ、ワキ方は三つあるとのことです)等の説明があり、またプロでもいろいろ苦労されていることを話されました。
 1時間経過した後5分程度の休憩を取りその後能楽師の演技・説明が1時間続きました。演技は、ワキ方の隅田川と平家物語の藤戸、次にシテ方とワキ方での羽衣白龍でした。能については、多少テレビで見たことがありましたが、生の能楽師の声を初めて聞きました。その力強い声量には驚きました。相当腹筋を鍛えていないとあのような声を出せないと思いました。また、独特なリズムや口調も心地よいものでした。でも意味は理解できませんでしたが。


 能楽師から能を楽しむ為に次のアドバイスがありました。
 ・能の面白味を得るには、あらすじ・ストーリーを事前に調べておく。
 ・わかろうとするのではなく、何かを感じてもらいたい。
 ・自分も参加しているつもりで観る。
 ・舞台の空気を共有する。
 ・演技後の拍手は余韻を残すためしない方がいい。
 等々


 いつもなら2時間の講演はたまに眠くなることがありますが、今回はあっという間に時間が過ぎました。


 能についての知識が少ないのでまだ敷居が高いという感じですが、今回の受講で多少は理解でき、今後能を観覧したり講座を受講してみたいと思いました。能は謡(うたい)と囃子(はやし)を伴奏に舞踊的な所作でストーリーが展開する歌舞劇で、継承されている演劇としては「世界最古」といわれています。また、ユネスコの世界無形文化遺産に指定されています。能は、猿楽や田楽から能になり、それが歌舞伎等に変化していったとのことです。郷土芸能は後継者がいなく廃れていっていますが、日本の古典芸能は世界にも誇れるものと思いますので、いつまでも受け継がれてもらいたいと思います。
                                    以上

(文責:すすいが 60代・男性)

↑ページの先頭へ

Copyright 2010 Second Academy Co.,Ltd All rights reserved.