松竹梅鶴亀そして・・・うた
豊島新聞リレーエッセイ
「松竹梅鶴亀そして・・・うた」
渋谷千恵(ティーコーディネーター 食器バイヤー 淑徳大学公開講座「世界のお茶」講師)
ほんものの漆の器は、何度も修理が出来るので親から子、子から孫へと三代受け継ぐことができる。欧州の銀器がそうであるように。
椀や箸など日常使いの漆器もいいが、私のお気に入りは、非日常「はれ」の日の器、「宴遊盃」だ。別名「座興盃」とも呼ばれ、お座敷遊びのための酒器である。
我が家の宴遊盃、外見は橙の形をした蓋物のようだが、蓋を開けると中に少しずつ大きさが違う盃が5客。各々に、松・竹・梅・鶴・亀の吉祥文様が蒔絵で描かれている。そしてサイコロが1つ。サイコロのそれぞれの面には、盃と同じ絵柄が5つ、最後のひとつは「うた」と書かれている。サイコロを転がして出た目と同じ盃で酒を飲み、「うた」が出たら歌を詠んだり唄ったりするという、風流で優雅なあそびのための器だ。盃のサイズがすべて異なるので、たくさん酒を飲みたい人が小さい盃になったりするのも面白く、私の講座の中でお見せすると、皆さん感激される器なのだ。
漆は英語でジャパンともいう。磁器がチャイナとよばれるように、その国を代表する伝統工芸品なのだ。私は世界のお茶の講師として、これからも様々な国の茶、食、器、文化を伝えていきたいと思っている。
(2014年02月28日)