豊島新聞リレーエッセイ 「ヴィクトリア女王のお茶会」 渋谷千恵
ヴィクトリア女王のお茶会
イギリスのアフタヌーンティに欠かせないスイーツといえば、「ヴィクトリア・サンドイッチケーキ」。スポンジにベリーのジャムを挟んだシンプルなケーキ。このケーキの由来となったヴィクトリア女王は、紅茶の歴史を語る上で欠かせない人物です。
ヴィクトリア女王が即位した1837年~1901年、産業革命や植民地の拡大で大英帝国が最も輝いた時代、アフタヌーンティの習慣が生まれました。当時のイギリス上流階級のディナーは社交を兼ねたパーティーが多く、時間が遅いことや、社交がメインで食事を楽しむことができないのが普通でした。そこで1840年に、ある侯爵夫人がランチとディナーの間の夕方の時間に、お茶とパンやケーキをメイドに用意させたのがアフタヌーンティ(午後のお茶会)のはじまりでした。やがてそれは貴婦人たちの社交の場となり、互いの屋敷を行き来して自慢のお茶やケーキ、食器を披露しあうようになっていくのでした。紅茶が大好きな女王は、「紅茶は正しくいれること。」「食べ物は豪華に、食器は優雅に」などアフタヌーンティのルールを設けたほど。
ヴィクトリア女王は英国王室初の恋愛結婚をし、英国初の純白のドレスと純白のベールを身につけての結婚式、というロイヤルウェディングの歴史を変えた女王でもあります。41歳で最愛の夫、アルバート公を亡くした後、あまりの悲しさに人目を避けて暮らしていた女王を慰めようと、幾度となくお茶会が開かれたといわれています。夫の死後初めて女王が姿を現したお茶会で供されたのが、女王のために作られたベリーのジャムをサンドしたケーキでした。素朴で家庭的な味のケーキを気に入り、ケーキには女王の名前が付いたといいます。
ヴィクトリア女王の誕生日は5月24日。
女王が愛した、蝶と花が華やかなヘレンド社の「ヴィクトリアシリーズ」のカップとプレートで、一途な愛を貫いた女王に思いをはせて優雅なお茶会を開いてみませんか。
渋谷 千恵
(淑徳大学公開講座「世界のアフタヌーンティ講座」担当)
→ 講師関連講座(2013年度春夏期)
「世界のアフタヌーンティー」
2013年5月14日(火)より開講
(2013年04月01日)