豊島新聞リレーエッセイ 「地を築き建てられた築地本願寺」 前田壽雄
地を築き建てられた築地本願寺
築地は、日本の代表的卸売市場の築地市場があることで有名ですが、その地名の由来は築地本願寺が大きく関わっているといわれています。
明暦三(一六五七)年、振袖火事と呼ばれる歴史的な大火で坊舎を焼失した築地本願寺(当時、江戸浅草御坊)が、その代替地として幕府より指定されたのが八丁堀の海上でした。そこで佃島の門信徒が中心となり、本堂再建のために海を埋め立てて土地を築きました。地を築き再建されたお寺であることから、「築地御坊」と呼ばれるようになりました。
ところで現在の築地本願寺は、伊東忠太氏の設計により、昭和九(一九二三)年に落成しました。寺院建築としては珍しく古代インド仏教様式の外観で、一昨年、登録有形文化財になりました。またご本尊である阿弥陀如来は、あらゆる世界の数限りない生きとし生けるものすべてを救おうとはたらきつづけている仏さまです。「必ず救う、われにまかせよ」と、いつでもどこでもよびかけ、いまここにいる私たちを救い取って決して見捨てることはありません。
この阿弥陀如来の平等で広大な救いに基づき、築地本願寺はだれにでも開かれたお寺となっています。そのため拝観料はいりません。銀座や新橋など築地の近くを訪ねた折には、ぜひ築地本願寺にお参りされてはいかがでしょうか。
前田 壽雄
(浄土真宗本願寺派総合研究所研究員・淑徳大学公開講座「親鸞の世界」担当)
→ 講師関連講座(2013年度春夏期)
「親鸞の世界 『教行信証』を読む」
2013年4月10日(水)・開講
(2013年02月12日)