豊島新聞リレーエッセイ 「スルメのような柳田國男」 高見寛孝
スルメのような柳田國男
私が柳田國男を研究するようになったのは、今から二〇年前の平成六年のことでした。その年、柳田と何らかの関係を持つ九つの市区町村で組織された柳田國男ゆかりサミットが、世田谷区を会場として開催されたのです。当時、世田谷区教育委員会に勤務していた私が、柳田國男をテーマとする展示を企画することになりました。学生時代に買い求めた『定本柳田國男集』を引っ張り出して、あれやこれやと世田谷区のことについて書かれている著作を読んでみました。しかし、難解な文章のためなかなか理解することができませんでした。
今回、縁あってこのエクステンションセンターにおいて、柳田國男について講義する機会を得ました。そこでもう一度『定本柳田國男集』を読み返してみたのです。すると、どうでしょう。今まで気が付かなかった点や、理解できていなかった文章も少しはわかるようになっていたのです。柳田國男はまさにスルメのような存在であると思います。
一度噛んだぐらいではスルメ本来のうまさが味わえないように、一度や二度読んだだけでは、奥深い柳田の学問を理解することはできないのだと思い至りました。噛めば噛むほど味の出るスルメのように、何度も何度も読み返すことによって、その真意を理解することができる。まさに、柳田國男はスルメのような存在です。
高見 寛孝
(國學院大學文学部兼任講師・淑徳大学公開講座「柳田國男からの日本人へのメッセージ」担当)
→ 講師関連講座(2013年度春夏期)
「柳田國男の思想と学問」
2013年4月1日(月)・開講
(2013年01月31日)