豊島新聞リレーエッセイ 「ジャズの世界―突然のミラノ紀行」 悠 雅彦
ジャズの世界―突然のミラノ紀行
ミラノ(イタリア)のジャズ演奏家たちの呼び掛けで去る5月末の3日間、ミラノ市内のホールや特設会場で東日本大震災復興支援をうたった日伊共同イヴェント<JAPZITALY>(ジャプジタリー)を取材する機会があった。
イタリア側の呼び掛けで実現したのも珍しいなら、呼応した日本側の主導媒体が「Jazz Tokyo」というウェブ・マガジンだったのも稀有なことだった。現地で最初に心打たれたのは、プログラムの表紙にこのコンサートが「日本の被災児童のためのジャズ・エイド」とうたわれていたこと。日本と並ぶ地震国であるイタリアの音楽家ならではの、日本の被災者に対する温かな心遣い。まして開催直前に北部ボローニャが震度6の地震に見舞われた中での彼らの献身には頭が下がった。
日本側から渡辺貞夫、坂田明、タイガー大越ら11人。イタリアからはピアノの名匠フランコ・ダンドレアら。演奏はどれも聴きごたえ充分で、ECMレコードのジャケット写真で名高いマゾッティのヴィデオ映像と即興演奏による興味深いステージもあった。渡辺貞夫とフリー・ジャズの坂田という対照的なアルト奏者が談笑したり、前日の歓迎会で「行け、我が想いよ、黄金の翼に乗って」(ヴェルディの歌劇「ナブッコ」の1曲、サッカー応援歌)を返礼演奏した渡辺のプレイなど、普段見られない光景は私にとっても心温まるいい思い出になった。こういう国際交流がもっと活発に行われるといい。
悠 雅彦
(ジャズ評論家、淑徳大学公開講座「ジャズを学ぶ・初級・中級」担当)
2012年7月6日記
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