豊島新聞リレーエッセイ 「上総国・下総国探訪」 城﨑陽子
上総国・下総国探訪
厳しい暑さの残る9月半ばに上総国・下総国の国分寺、国分尼寺にでかけました。国分寺、国分尼寺は聖武天皇の発願によって全国に建立された鎮護国家の寺です。
上総国の国分寺、国分尼寺は千葉県市原市にあります。そして、国分尼寺は金堂の廻廊が復元されています。併設されている史跡上総国分尼寺跡展示館では、仏教東漸による寺院建築伝来の様相を解説したVTRをみせていただきました。下総国の国分寺は市川市の台地の上に位置しています。国分寺の寺域は国によって多少異なりますが、金堂、講堂に七重の塔を擁する伽藍の一辺が相当な大きさであったことはいうまでもありません。ここでは、住職さんの解説をうかがいながら往時の様子を偲ぶ講堂跡の石碑や塔跡の石碑を見学しました。
現代の私たちが奈良時代当時の建築物やその建築物を囲む環境を想像することは難しいことです。しかし、考古学の成果によって「復元する」という作業はそれを容易にさせます。そして、当時に思いを馳せることの楽しさは、上代文学を学ぶ方だけでなく魂の記憶を共有するかのような懐かしさを覚えます。
小旅行の最後は『万葉集』に残る伝説の女性・真間の手児名を祀る霊堂へ。夕方になって、幾分か暑さも和らいだ寺域に秋の気配が漂っていました。
城﨑 陽子
(國學院大學兼任講師、淑徳大学公開講座「万葉集」担当)
→ 講師関連講座(2012年度冬期)
「万葉集の世界~故地見学会「埼玉古墳群と万葉歌碑」」
2013年3月14日(木)・開講
「朝鮮半島と日本」
2013年1月19日(土)・開講
(2012年11月02日)