東京から、本屋がなくなる日 臼井 隆宏
私の仕事場のある四谷三丁目に、小さな本屋があった。老舗の「街の本屋さん」。定番が中心の雑誌、文庫本、漫画や実用書が少々。こぢんまりとした規模の店だった。
それが、先日閉店した。店頭の「お詫び文」には、店主高齢のため……という意味のことばが綴られていた。確かに高齢の店主らしき姿は、ここ一、二年見かけていなかった。もう店先には立てない、かといって下の世代に継がせるほどの商売でもない――老店主は、そう考えたのかもしれない。
実際、書店業は大変だ。「本屋では儲からないから辞める」というのなら、とっくのとうに辞めていたはず。それくらい、最近は本が売れない。仮に売れたとしても、みんな「amazon」か大規模書店で買う客ばかり。かく言う私自身、めったにその書店を利用することはなかった。
そして今度は新宿三丁目の大規模書店が、ビルの再開発を理由に、閉店・撤退。跡地には、よくあるファストファッション店と、家電量販店が入るらしい。もはや規模を問わず、書店という商売が成り立たない時代になったのだろうか。「東京から本屋がなくなってしまう」というのも、あながち誇大妄想とは言えない状況のようである。
臼井 隆宏(㈱コータック代表取締役・淑徳大学公開講座「副業ライター入門」講座担当)
(2012年05月02日)