ガテン系の若者たち 盛田隆二
去年の九月、宮城県石巻の被災地支援ツアーに参加したが、深夜バスに乗り込んで驚いた。乗客の半数が十代・二十代の男子だったからだ。彼らはすこぶる元気がいい。明け方に三陸自動車道のPAに着くや、トイレを脱衣場代わりにして一斉に作業着に着替え、長靴を履き、腰にゴム手袋をぶらさげる。その手際の良さに惚れ惚れして話を聞くと、彼らのほとんどがガテン系の仕事に就く若者だった。
車中は笑い声と携帯ゲームの電子音に満たされていたが、バスが牡鹿半島に差しかかると、大量の瓦礫を目の当たりにして、「マジっすか」と彼らは絶句した。
当日、ツアー参加者の我々に割り当てられたのは、浜に散乱したブイの運搬作業。若者たちは重さ十五キロもあるブイを両手に持ち、二つ同時に力任せに運んでいく。彼らの寡黙で献身的な働きぶりには目頭が熱くなった。
その夜、宿泊した旅館は五人の相部屋で、うち二人は二十歳の若者だった。風呂上がりのビールをご馳走すると、彼らは白い歯を見せて笑い、「きれいなお姉さんのいる店、この辺りにありますかね」と訊いてきた。おいおい、とぼくは苦笑しながらも、まだ幼さの残る二人の顔を実に頼もしく眺めたものだった
盛田隆二(作家・淑徳大学公開講座「短編小説を書く」担当)
(2012年04月13日)