春の池上本門寺 関戸尭海
三月三〇日に、淑徳大学の古寺巡礼の実践講座にて、立正大学名誉教授の渡辺宝陽先生と大田区の池上本門寺を訪ねました。東日本大震災の災禍によって、二週間延期しての開催です。しばらく、東京でも交通機関や流通機構が混乱していましたが、このころにはやっと少し落ち着いてきました。
はじめに、紀州徳川家の初代藩主、頼宣の娘の芳心院が生前に建立した墓所のある永寿院を拝観し、吉田尚英住職に説明してもらいました。芳心院は徳川家康の側室、養珠院お万さまの孫にあたります。お万さまは、身延の七面山の女人禁制を解くなど、熱心な法華経の信仰を持った方として知られています。芳心院は蛇が嫌いだったため二重の堀溝が築かれており、莫大な費用がかかったので墓所は万両塚と呼ばれています。
そして、大堂(祖師堂)を参拝し、重要文化財の五重塔・日蓮聖人の荼毘所の宝塔、昭和の日本の復興の象徴とされる人気プロレスラーの力道山の墓所などを見学しました。
晩年、体調を崩した日蓮聖人は、湯治を目的として常陸の湯(現在の茨城県)を目指しました。しかし、病状思わしくなく、有力な信徒であった池上氏の邸宅で示寂しました。最後に寄りかかって立正安国論を説法した柱が大坊本行寺に残っています。
関戸尭海(淑徳大学公開講座「法華経」担当、立正大学日蓮教学研究所研究員)
(2011年08月29日)