優しさとは 萬納 嶺
昨年四月、なんなんだこの感じ?! 僕はいまどないなってるの?! 実際には、この約千分の一くらいのテンションで我が身の異変を感じた僕は、学校にて、友人ら諸先生方に診察をお願いした。先生方は口を揃えて診断結果を僕に告げる。「恋の病です」
自分だけは大丈夫、自分に限ってそんなことは起こらない。突然のアクシデントに見舞われたとき、医者から病気を告げられたとき、値札がついたままの服を指摘されたとき、人は「まさか」と思い、そういえば「自分だけは」の根拠が全くないことに気付く。
僕にとって〝恋の病〟とはまさにそれで、まさか患うはずのなかった生まれて初めての大病に苦しむことになった。食欲は失せ、口数は減り、笑顔の絶滅が危惧された。元気のない僕を見て心配してくれる人もいたが、仲の良い友達に限って、そんな僕を見てキャピキャピ喜んでいた。でも、怒るに怒れない。その気力すらない。そしてなにより、人の不幸を笑う彼らを見て、いつもの自分がオーバーラップしてしまったから。
他人の痛みというものは、自分が傷ついてみないことにはわからない。傷ついた人に優しくできる人というのは痛みを知っている。それだけ自分も傷ついてきたからなのかもしれない。
とまあ、そんなことを思いつつ、大病をすっかり克服した僕は、友達の失恋をいまかいまかと待ちわびている。
(2011年07月12日)