カラス 岡田 照子
夫がガラス戸をあけ、トントンと窓を叩いていた。「シッー、シィー」「コラー」
カラスを追っていると言う。隣の庭の落花生を狙っているらしい。
「やめて! カラスって利口なのだから、仕返しされるわよ」
川越でご近所の人が、ゴミをあさっているカラスを追い出したら、カラスが二階の屋根を突っついて仕返しをした。「私を追い出したのはあの家の人」と、よく覚えているらしい。せっかくゴミをあさっていたのに追い出されて、よほどくやしかったのでしょう。
狭山の智光山公園でカメラを持って立っていると、ツンツンと突っつく音がした。ふとみるとカラスが私のカメラを突っついていた。真黒に光った頑丈そうな嘴だった。一瞬、怖い、と竦んでしまった。娘と孫がこの公園で、スーパーの袋にボールを入れて持っていると追いかけられ、怖い思いをしたと言っていた。カラスは光るものが好きで、自分の巣に、子どものおもちゃ等を持って行ってしまうと言う。カメラも光っていたのだ。スーパーの袋に入っていたボールは、食べ物が入っていると思ったのでしょう。
ゴミの日には必ず朝早くから、カアーカアーと鳴いている。ゴミの穴を掘って食べ物の残りを入れていると、ちょっと離れたすきにどこからか飛んできて、てんぷらのエビだけを持って行った。好きなものだけを選んでいる。
カラスは不吉なものときらわれてきた。朝早く騒がしく鳴くと、誰かが死ぬとか? 人が死ぬとお墓にお供え物をするから、それをねらっているとも言われている。
人に嫌われるカラスはかわいそうな気もするが、あの黒光りする嘴を身近に見ると、怖いと思うのも事実である。
(2011年06月21日)