「北京の大学生」 宮川葉子
過日、縁あって北京大学と北京外国語大学・研究センターで、「源氏物語」関連の講座を担当した。
尖閣諸島問題など複雑な日中関係にある折、心配な点もないではなかったが、中国で日本文学や日本文化を学ぼうとする学生たちは親日的であった。物珍しさも手伝ったのであろうが、学生たちは非常に熱心で、身を乗り出して講義を聴くという姿勢が、視覚的にも雰囲気的にも伝わって来る。おとなし過ぎる日本の学生と比べ、今の日本人に欠けているのはこうした積極性ではなかろうかと思わざるを得なかった。
北京大学はキャンパス内に四万人が居住すると聞く。ちょっとした一市町村である。学生も教職員も多くがキャンパス内の寮に住む。北京市内に自宅があっても、ウィークデーは寮で過ごすのである。何故か。通勤・通学にかかる時間がもったいないからなのである。時間さえあれば勉強しているという、そのエネルギーに驚かされる。
しかしそこまでやっても、大学生が増大している現況では、なかなか思った所へ就職できないという。就職難は日本ばかりではないと、妙に納得しながらも、地道に勉強することの大切さを改めて考えさせられた経験であった。
宮川葉子(淑徳大学国際コミュニケーション学部教授・淑徳大学公開講座「源氏物語」担当)
(2011年02月09日)