「豊島新聞」リレー゛東京歳時記゛
山深き霊地、三峰山と修験道
先頃、淑徳大学公開講座「日本の山岳宗教」の見学会が、埼玉県秩父の三峰山で開催された。
三峰山は、古き時代から、狼すなわち「お犬さま」の住まう霊地として、人々に崇められてきた。神仏分離以後、修験道の霊地から神道のそれへ、生まれ変わった。
現在は、パワースポットブームの影響もあってか、若い人々も関心を寄せている霊地である。
お山の麓から、自動車で一気呵成に駆け上がると、山の頂に、さながら、天空の城が顕れ、それを取り囲む高き山々が、こちらを見つめていることに気づかされる。
すなわち、このような、多くの山々が発する霊気を、一点に凝縮させたかのような霊地が、三峰山なのである。
今回、ご案内頂いた神職の朝日則安氏は、修験者としても、ご活躍されている方である。夏の時期には、吉野から熊野まで、奥駆けされているという。朝日氏から、ここ三峰山が、かつては、修験道の霊地であったことを、おうかがいした。三峰山は、雲取山・妙法ヶ岳・白岩山の三山を称して、名付けられたと云われている。三峰山の正面に、ひときわ高く聳えるその一つ、白岩山、別名和名倉山は、日本二百名山に数えられる名山であるが、人々を容易に近づけない山だという。
このような山々で、かつては、修験者が行に勤しんだのである。山深き霊地、三峰山の古のプロフィールである。
西村敏也(武蔵大学講師・淑徳大学公開講座「日本の山岳宗教―修験道の世界―」担当)
(2010年09月08日)