豊島新聞リレーエッセイ「東京歳時記」
運動会とペン習字展覧会
日本橋高島屋カルチャースクール講師
日本橋三越カルチャーサロン講師
淑徳大学公開講座講師
林 拓鶯
毎年秋に書作の展覧会をやっている。銀座の小学校前にあるギャラリーを借りてカルチャーや各お教室の方々とのグループ展である。
まだ蝉の声も喧しい頃の会期だが、毎年その小学校は秋の運動会の練習の真っ最中で、4階にある会場への廊下からその練習風景がよく見える。蔦のからまる校舎に囲まれた小さな校庭では、毎時間学年の違う先生や生徒が、たいていはお遊戯の練習をしている。それぞれの学年の先生の指導のもとに、もうほとんど振り付けを覚えた生徒達が最後の仕上げをしている。学年に合わせた選曲は見事でドラマやコマーシャルで耳にする曲であったり、ちょっとなつかしい歌であったりする。音楽に合わせて一生懸命踊っている様子に心が和む。突然降り出した雨で雨宿りをして心配そうに空を見上げている先生や子供達。学校教育や教育関連の不祥事が色々と取りざたされる昨今だが、そんな風景を見ていると「何にも心配ないわ。大丈夫!」と心から思える。
また来年も一年学年の上がった子供達の練習を見ながら、一年歳を重ねた私たちも展覧会を楽しめますように…と雨のあがった空に願いをこめる。小さな小さな歴史である。
(2008年12月18日)