豊島新聞リレーエッセイ「東京歳時記」
雑司が谷 鬼子母神
山田 徹(淑徳大学国際コミュニケーション学部講師)
今年の6月の東京メトロ副都心線の開業により、目白の台地に鎮座する雑司が谷の鬼子母神堂には手を合わせる親子連れの姿や、周辺を散策する人の姿が以前より多く見られるようになった。
天保年間(1830~1843)に刊行された『江戸名所図会』の絵図に描かれた参道の茶屋や
鳥居は姿を消したが、天正の頃、雑司谷村の長島内匠から奉納されたという欅の古木が参
拝の人びとを御堂に導く。
御堂前には「法明寺の雌木、鬼子母神の雄木」といわれた樹齢七百年の御神木「子授け
銀杏」がある。
御堂にお祀りされているのは、安産・子育(こやす)の神として信仰を集めている鬼子
母神(梵語で訶利帝)である。
『江戸名所図会』には、この地の名産として、風車・麦藁細工の角兵衛獅子・すすきみ
みずくが紹介されている。風車・角兵衛獅子は一時廃れていたのを近年、地元有志によっ
て復刻された。また、すすきみみずくは鬼子母神堂近くの音羽屋の岡本さんによって、埼
玉県のすすきを使い作られている。その愛らしい姿は、今年8月に発行された、「豊島区
散歩道」切手に豊島区を代表するものの一つとして取り上げられている。
(2008年12月16日)