豊島新聞リレーエッセイ「東京歳時記」
青春の油絵と写真
写真家 永島 浩二
昭和三八年(1963)十二月、
東京オリンピックを来年
に控え、池袋の街も騒がし
くなっている。
憧れの林武先生が指導
する芸大を目指し高校二
年の小生は北風 が吹き抜
ける都電池袋駅(現、グリ
ーン通り交番辺り)から竹
早町へ行き文京区水道端
の名門美大予備校「すいど
ーばた洋画会」夜間部へ通
っていた。(後に目白に移転、
現・すいどーばた美術学院)
芸大入試のために実技の
必要があり、デッサンは古
代ローマ彫刻複製石膏像を
正確に立体的に写し描き、
油彩で人物を描く実習して
いた。しかし、何か新しい
絵とは何か無いかなど考
えている時、銀座の洋書
店で画集、写真集を見て
いるとマン・レイが撮影し
た女性ポートレイトのソ
ラリゼーション写真を発
見、今までの写真とは違
う。彼に興味を持ち、パリ
で活躍するシュールレア
リズムの写真家・画家であ
ることが判り、進路変更し
て日大芸術学部写真科に進
み写真を学ぶことにした。
授業の他に宿題テーマ写
真があり、課題「ふるさと」
で池袋の街を気の向くま
ま徘徊して新しい発見の
撮影を始めていた。
夏休みは撮影旅行と秋
の公募独立美術展のため
にF百号の油絵三点を描
き上げ搬入、高校時代か
ら連続五年入選して会友
となり油絵と写真の青春
を過ごしていた。
(2008年12月12日)