豊島新聞リレーエッセイ「東京歳時記」
「ハーブとわたし」
ジャパン・ハーブ・スクール講師 森川理恵
路地裏に鉢を並べていたり、狭い庭をうまく使ってたくさんの花を咲かせていたり、2階のベランダにこぼれそうに植物が植えてあったりする、そんな下町で生まれ育った。
ハーブをはじめとする植物を用いる園芸療法に、「センサリーガーデン」という五感を刺激する庭がでてくる。視覚だけで楽しむだけでなく嗅覚や触覚、聴覚、味覚で楽しむ庭である。実際には庭ではないが、散歩をしながら嗅覚を働かせると楽しい。
よく目に(鼻に)するのは、甘く強い香りのキンモクセイである。あまりのよい香りに、
保存したいと考えた友人は、ビニール袋に塩と細かいキンモクセイの花を入れた。塩が保
留剤の役目をして、香りが持続するのである。
初夏に咲くクチナシ、盛夏に咲くオシロイバナなど、香りは記憶と結びつくといわれるが、これらの香りを嗅ぐと、いつも昔の記憶がよみがえるから不思議である。
近年、よく見かけるのがジャスミンの類。ハゴロモジャスミンはツルをのばしてどんどん殖えるので、たいてい花が群れて咲くので香りも見事である。歩いている途中で香りを見つけると少し得をした気分になる。香りを嗅ぎたくて、回り道をすることもある。
(2008年11月28日)