豊島新聞4月(伊藤堯貫)
チベット自治区がゆれている
伊藤堯貫(大正大学講師・僧侶)
新年度が始まった。入学、入社などにより、新たな人と出会う時期である。ぼくは今から20年ほど前に西巣鴨にある大正大学に入学した。これが、千葉県の九十九里の地に生まれたぼくが、豊島区と関わりをもった最初である。大正大学は真言宗智山派、真言宗豊山派、天台宗、浄土宗の三宗四派が母体となって経営されている大学である。
大学に入学してから四年後、私は仏教をさらに学ぼうと大正大学の大学院に進んだ。そこで、僕はさまざまなすぐれた先生や先輩と出会うことができた。
その先輩の中には、チベットから留学してきた二人のチベット僧がいた。彼らは純朴で高貴な精神の持ち主であった。ぼくらは彼らと出会うことにより、幸運にもチベット語やチベット仏教について触れ、学ぶことができた。
彼らはチベットから来たのではない。1959年、チベット動乱により、チベットの指導者であるダライ・ラマは、インドのダラムサラに逃れて亡命政府をおこした。ぼくの先輩の二人のチベット僧も、このダラムサラからやってきたのだ。
現在、チベット自治区がゆれている。ダライ・ラマは、チベット自治区の領土的独立を主張しているわけではない。また北京オリンピックの開催にも賛成している。かれはチベット仏教を根幹とするチベット文化の尊重、文化的独立を主張しているのである。またダライ・ラマは仏教の精神による非暴力による運動を訴える。願わくはチベットに平和が訪れんことを。
(2008年09月10日)