豊島新聞 東京歳時記原稿(八月分)
後久 博(まちづくりプランナー)
私に欠かせない七月の恒例行事、それは大銀座落語祭である。
次代の大御所といわれる東西の落語家で構成する六人の会(代表 春風亭小朝)が主宰しており、銀座の十を超えるホールや劇場で、五日間に渡って、古典落語から新作落語、狂言と落語のコラボ、ミュージカル落語、落語演劇など落語家や演芸人総勢四百名が出演するという落語の一大祭典である。
都内だけではなく、全国から落語や演芸フアンが、銀座の二丁目から八丁目の会場を行き来する。毎年大阪から二組の知人が宿を押さえてやってくる。それぞれのお目当ての演目は異なるが、夜は顔を合わせ、酒を交えての落語談義に花が咲く。
残念なことに、五年前に六カ所三日間で始まった落語祭であったが、今年で最終回をむかえた。この落語会は、遠方より来る友との楽しい再会の機会ともなっていた。
宴席では学生時代を懐かしみ、また青臭い昔の恥がさらけ出される。笑って済まされる、昔の友との間だけに許される不思議な世界が時を忘れて進行する。メールでは味わえない、生の会話の素晴らしさであろう。次の再会の機会となる代わりの歳時を探さなくてはならない。
(2008年09月25日)