豊島新聞500字リレーエッセイ(2)
五月は菖蒲の季節
太田裕啓(いけばな五十鈴古流主宰)
現在、淑徳大学の公開講座にいけばなの講座を開いています。
器にははなを入れて飾ることは世界中で見られますが、それらは私達のいけばなとは少し異なります。はなが綺麗だから眺めて楽しむ、自然界からあるいは栽培した花を切って部屋の中にも飾るわけですが、「飾る」ことと「活ける」ことの違いとでも申しましょうか。
いけばなを活ける際のはなは、絵を描くときの絵の具とは違います。
白の桃は白の桃以外の何物でもありません。白の桃を「活ける」のです。
はなと活け手が対等の関係にあると思って私達は、はなに接しています。
日本に来た外国人で桜の開花が全国版のニュースに載るのを聞いて驚いた人がいるそうですが、私達は、木々が芽をふき、花が咲き、葉が繁り、紅葉し、、、と何故だか一々感動します。自然との接し方がちがうのでしょうか。「春になれば芽が出て花が咲くさ、夏になれば葉が繁る、何がおもしろいんだ」と思う人もいるのでしょうか。ちょっと寂しいことです。
世は桜が終り一気に緑が濃くなって五月は菖蒲の季節、私達は気がきではありません。
皆さんも忙しい手をいっとき休めてはなを観てはいかがでしょう。
(2008年09月11日)