俳句実作と鑑賞講座(5)
白鳥
島田紀実子さん
春の水とほき鼓動を聞くごとし
風を裂く音をはげしくいかのぼり
白鳥の沼をゆらして着水す
船窓を鰡の打つたる夕明り
うすぐもを掃いてとほくの山笑ふ
月下美人
田村 唯子さん
黒潮のゆつくり動く花でいご
目つむりて月光の曲走馬燈
息吐いて月下美人となりゆけり
ままごとの丁寧ことば赤まんま
唄ふ子の声透けてくる月夜かな
空の碧
二木 公子さん
風渡る刈田の果ての遠筑波
抜け道のいよいよ狭し葛の花
振り向けと音を降らして銀杏の実
たそがれて紫式部この辺り
踏み込めぬ空の碧さの犬ふぐり
(2008年07月01日)