短歌の実作と秀歌鑑賞(4)
途影
鈴木淑枝さん
小草履の内股にゆく渡月橋フロリダの女真似て外股
数珠屋町何方(いづかた)なりやしらたまの登美子の日傘かしぐ格子戸
数珠屋町下京なれど上に下 もしや登美子はたかくら東数珠屋
晦(つごもり)のBSテレビ詳(つばら)らかに指揮者の眼(まなこ)ビオラの小指
小春日や太平洋の松林きのうの雹は天辺に去る
秋となりぬる
石井弥栄子さん
小夜ふけて外よりもどる猫抱けばひんやりとせり秋となりぬる
ねこに降る月の光に誘(いざな)はれ出でしVerandaちちろ虫鳴く
月明にうかぶ家並の静もりてこほろぎの声たかく冴えけり
月めでてをりますといふ顔で虚空見上ぐる猫ぞをかしき
爽快な秋の高空広ごれば窓すべて開け風とり込みぬ
(2008年07月07日)