詩を書く(2)
アフタヌーン
今泉秀雄さん
いつもより遅い午後がやって来た
着飾った心だけ上目使いで
過ぎ去った空洞を見ている
埋め合わせする代わりに運命さし出して
難所を切り抜けようとでも言うのか
すんなりこなした出来事の断片が
乱雑に折り重なって変幻する化粧室
唇にさした紅が燃える夜空仰いで
時に潜む約束を拾う前に
もっと足元を固めろとはしゃぐ
辻褄合わせがうまい受付嬢の
肩越しにそびえるモットーは少し霞んでいる
お茶をすすって愚痴を拵える目線を
何故慈しむ余裕と間違えるのか
ほんの一瞬である日溜りの午後へ
集い輪舞する歌姫たちよ
忘却と偶然が溶け合って
書類棚の上で泳いでいる
外出も予定も全て人まかせにして
食堂へ急ぐ絵姿こそ
待ち望んでいた天上の嫉妬心
記憶から誕生した女神の立像
吸い寄せられて取り込まれてしまう
未完成を狙う恋愛決死隊の
通りぬける細い廊下は
容易に近附けないほど薄暗く
明日を打消すようにゆがんでいる
(2008年07月11日)