短歌の実作と秀歌鑑賞(2)
胡蝶侘助
秋山佐和子さん
日の在(あ)り処(ど)さししめすごと鳩の群れゆるやかに舞ふ元朝の空
朝の水ついばむ鳩のくちばしより氷柱(つらら)のごときしづく零るる
かたはらに寄り添ふ君のけはひせり冬木ざくらをしばしあふぐに
これの世のみなかみを恋ひほつとりと莟(つぼみ)をひらく胡蝶侘助
思いびとあらはれ出でよ谷を埋め方朶のさくら咲きてしづもる
夏蔦の繁る壁面 青銅の一角獣は水の束吐く
半夏生しろく群れ咲く岸辺より水音(みのと)かすかに漕ぎゆくひとり
昨夜(よべ)ひそかに訪れしものあるごとくさるすべりの紅(こう)石段に散る
みどりごを眠りの淵にいざなへる白露の夕の風のすずしさ
色づきてしづけき山よ時を経て悲しみごとも均(な)らされゆかむ
(2008年07月03日)